1. 工業簿記とは?商業簿記との決定的な違い

商業簿記は「完成した商品を仕入れて、そのまま消費者に売る」ビジネス(商社・小売店・スーパー)を対象としています。そのため、商品の原価は「仕入れたときの金額(仕入代金)」で明確でした。

一方、工業簿記は「自社の工場で原材料を購入し、工員の人件費や機械の電気代をかけて製品を作り、販売する」製造業(メーカー)を対象とします。したがって、「製品を作るのにいくらかかったのか(製造原価)」を自分で計算しなければなりません。この計算手続きを「原価計算」と呼びます。

2. 原価の3要素(材料費・労務費・経費)と直接費・間接費

モノづくりにかかるすべてのコスト(製造原価)は、以下の「3要素 × 2分類」の合計6ブロックに分類されます。

原価の3要素 直接費(どの製品に使ったか分かる) 間接費(どの製品に使ったか特定できない)
材料費(モノのコスト) 直接材料費
主要原材料(机の木材、車の鉄板等)
間接材料費
補助材料(塗料、接着剤、ネジ、釘等)
労務費(ヒトのコスト) 直接労務費
製品を直接加工した作業員の賃金
間接労務費
工場長・事務員・清掃員の給料、休業手当
経費(その他のコスト) 直接経費
外注加工費、特定の製品の特許使用料
間接経費
工場の電気代・水道代、機械の減価償却費

3. 最重要:勘定連絡図(工場のお金の流れ)

工業簿記のすべての計算は、以下の「勘定連絡図」のパイプラインに沿って進みます。これを白紙にスラスラ描けるようになれば、工業簿記の8割は完成です。

勘定連絡図の4つのステップ

  1. ステップ1:要素別計算
    材料・賃金・経費を購入・消費する。直接費と間接費に仕分ける。
  2. ステップ2:製造ラインへの投入
    ・直接費(直接材料費・直接労務費・直接経費)は、そのまま「仕掛品(製造中の製品)」勘定へ直行!
    ・間接費は、いったん「製造間接費」勘定にプールし、基準を決めて各製品に配賦する。
  3. ステップ3:製品の完成
    工場で完成した仕掛品は、倉庫の「製品」勘定へと振り替えられる。
  4. ステップ4:製品の販売
    売れた製品は、損益計算書の「売上原価」勘定へと移動する。

4. 製造間接費の配賦と差異分析(シュラッター図)

製造間接費(電気代や工場の家賃)は期末にならないと実際の金額が確定しません。しかし、それでは製品の価格が決められないため、あらかじめ決めておいた「予定配賦率」を使って計算します。

  • 予定配賦額 = 予定配賦率 × 実際操業度(実際の作業時間)
  • 配賦差異 = 予定配賦額 − 実際発生額(実際にかかった金額)
    ・予定より安く済んだ場合:有利差異(貸方差異)
    ・予定より高くついた場合:不利差異(借方差異)

本試験では、この配賦差異を「予算差異(お金の使いすぎ)」と「操業度差異(工場の稼働不足)」の2つに分解する「シュラッター図」の作成問題が頻出です。

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