1. 8種制限が適用される「大前提の要件」
8種制限を学習する上で、何よりも最初に確認しなければならないのが「取引の主体」です。
8種制限が適用されるたった1つの条件
「売主:宅建業者」 ✕ 「買主:宅建業者以外の一般人」
- 買主が宅建業者(業者間取引)の場合:プロ同士なので8種制限は一切適用されない(民法の原則に戻る)。
- 宅建業者が「媒介(仲介)」または「代理」を行う場合:自ら売主ではないため8種制限は適用されない。
- 「貸借(賃貸借)」の取引の場合:売買ではないため8種制限は適用されない。
2. 8種制限の全体像と一覧表
宅建業法第37条の2〜第43条までに定められている8つの制限ルールです。
| 制限の名称 | 制限の内容(ルールの要点) | 違反した場合の効果 |
|---|---|---|
| ① クーリングオフ | 事務所等以外の場所で申込み・契約した場合、告知書面受領から8日以内なら無条件解約可能。 | 買主に不利な特約は無効。手付金全額返還。 |
| ② 手付の額の制限・手付解除 | 手付金の額は代金の2割(20%)以内。相手方が履行に着手するまでは手付解除可能。 | 2割を超える部分は無効。手付解除を認めない特約は無効。 |
| ③ 損害賠償額の予定等の制限 | 債務不履行による違約金・損害賠償額の予定の合算額は代金の2割以内。 | 2割を超える部分のみ無効。 |
| ④ 手付金等の保全措置 | 引き渡し前に一定額(未完成5%、完成10%等)を超える手付金を受け取る場合、保全措置が必須。 | 保全措置を講じない限り、買主は支払いを拒絶できる。 |
| ⑤ 契約不適合責任の特約制限 | 買主が通知できる期間を「引渡しの日から2年以上」とする特約以外、民法より不利な特約は不可。 | 無効となり、民法の原則(知った時から1年以内)が適用される。 |
| ⑥ 他人物の売買の制限 | 自己の所有に属しない物件は、原則として売買契約締結禁止(取得契約を結んでいる場合はOK)。 | 業法違反(行政処分の対象)。 |
| ⑦ 割賦販売の解除制限 | 賦払金の支払遅滞があっても、30日以上の相当期間を定めて書面で催告しなければ解除できない。 | 催告なしの解除特約は無効。 |
| ⑧ 所有権留保等の禁止 | 割賦販売等で代金の10分の3(30%)を超える額を受領した後は、原則として登記を引き渡す。 | 買主を保護するための引渡義務。 |
3. 最頻出①:手付金等の保全措置の基準(未完成5% vs 完成10%)
引渡し前に業者が倒産した場合に買主の手付金を守る制度です。保全が必要となる金額の基準を暗記しましょう。
| 物件の状態 | 保全措置が必要となる受領額の基準 | 保全の方法 |
|---|---|---|
| 未完成物件(建築中等) | 代金の「5%超」 または 「1,000万円超」 | ① 銀行等の保証委託契約 ② 保険事業者の保証保険契約 ※指定保管機関は不可! |
| 完成物件 | 代金の「10%超」 または 「1,000万円超」 | ① 銀行等の保証委託契約 ② 保険事業者の保証保険契約 ③ 指定保管機関との寄託契約(指定保管もOK!) |
【保全措置が不要となる例外パターン(頻出!)】
- 買主への所有権移転登記が完了した場合(登記があれば物件自体が手に入るため保全不要)。
- 買主が宅地建物の引渡しを受けた場合。
4. 最頻出②:クーリングオフの場所判定ルール
クーリングオフができるかどうかは、「どこで買受けの申込みをしたか」によって決まります。
| 場所の区分 | 該当する場所 | クーリングオフの可否 |
|---|---|---|
| クーリングオフできない場所 (事務所等) |
・宅建業者の本店・支店 ・専任の宅建士を置くべき案内所・モデルルーム ・買主が自ら申し出た「自宅」または「勤務先」 |
解除不可(できない) |
| クーリングオフできる場所 (事務所等以外) |
・喫茶店、ホテルのロビー、ファミリーレストラン ・業者が押しかけてきた買主の自宅・勤務先 ・テント張りの案内所(専任宅建士が置かれていない案内所) |
解除できる! |
5. 本試験の頻出チェック問題
確認問題:手付金の保全計算
【問題】宅建業者Aが、自ら売主として一般人Bと代金5,000万円の未完成マンションの売買契約を締結した。AはBから契約時に手付金200万円を受領し、建築工事中に中間金として100万円を受領しようとしている。Aは中間金を受領する前に保全措置を講じなければならないか?
【正解】保全措置を講じる必要がある!
【解説】未完成物件の基準は「代金の5%超(5,000万 × 5% = 250万円)」または「1,000万円超」です。手付金200万+中間金100万=合計300万円となり、250万円を超えるため、中間金を受領する前に300万円全額について保全措置を講じる必要があります。